mindscape blog
by mindscape-ltd
上海のプラタナス並木
ここ最近月1回ペースで通ってる上海。でも、街をゆっくり歩いたりといった時間など当然なく、打合せや現場見学程度で終わってしまうのが常だが、今回珍しく衝山路、復興路、淮海路付近の旧フランス租界地区を、日中ちょっとだけ歩く機会があった。実はこの辺を歩くのは、仕事で上海に来るようになる以前以来、約10年ぶりであったことに気がついた。(タクシーでは何度か通過しているが)噂通り、以前より格段とセンスの良いショップなどが増え、歩きやすい雰囲気になっている。この地区を特徴づけているのは、フランス租界時代に造られた古い建築とプラタナスの並木である。
a0073387_2021676.jpg

a0073387_2023543.jpg

世界の4大街路樹のひとつと言われるプラタナス(他は、ニレ、ボダイジュ、マロニエ)。ほぼヨーロッパ全域、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリアなど温帯地域のほぼ全域で見られる。しかし、これらの地域で街路樹として見られるプラタナス(鈴懸の木)の多くは、正確にはモミジバスズカケノキ(Platanus x acerifolia)(イギリス英語でLondon Planeと呼ばれるもの)という交配種である。原種のプラタナス(Platanus orientalis)は、西アジアからヒマラヤ付近の原産といわれ、500年以上前のペルシャ庭園や北インドの庭園にも頻繁に登場しており、この地域では現在でも普通に目にするが、日本、中国には比較的少ない(もちろん自生はしてない)。もうひとつのモミジバスズカケの原種、アメリカスズカケノキ(Platanus occidentalis)のほうは、北米の特に北の方で見られ、かつてはウォールストリートのニューヨーク証券取引所付近にもあったそうで、1792年設立にあたっての協定は「すずかけ協定」(Buttonwood agreement:Buttonwoodはアメリカ英語のプラタナス)と言われる。(しかし、アメリカでも私の印象では今日の一般的な街路樹などにはモミジバの方が多い気がする)

さて、このプラタナスが中国に最初に導入されたのは、この上海で、1902年、フランス租界のAvenue de Joffre (現在の淮海路)が整備されるに際してのことである。このため、中国ではプラタナスのことを俗に「法桐」(法はフランスのこと)と呼んでいる。中国式の正式名称は「二球懸鈴木」。「二球」は、モミジバスズカケを表し、集合果が果軸に2個程度つくから。つまり他に、「一球懸鈴木」がアメリカスズカケ(集合果が果軸に1個)、「三球懸鈴木」がスズカケノキ(集合果が果軸に3個以上つくから)と区別しているようである。当時の写真を見ると、高さ5m強、幹の太さが20cmくらいに見える。今日高さは10m以上、幹の直径は太いもので80cmくらい。
a0073387_2033451.jpg

a0073387_203564.jpg

このように、プラタナスといえば、鈴懸けの名の由来となっている実も特徴的であるが、街路樹としては、鹿の子のような迷彩模様の樹肌が他にない存在感を現す。そして幹や大枝は、なんともモッチリとした、独特の膨らみ方をして、枝振りも自由奔放にノビノビしている。さらに、上海のプラタナスが特異なのは、その枝張り(枝の横方向の伸び)の大きさである。よく見ると、樹高はそれほど高くない(とはいっても10mあるものはザラだ)が、しかしある高さから枝が3方くらいに広がって、枝張りも、大きいものは10mに達する。ちょっと小さめの道であれば、両側からすっぽり天蓋になって覆われ、見事な木陰の通りとなっている。これは、芯打ちという、幹の先端を早い時期に切ってしまい、枝を横に出させて伸ばすという仕立て方を意図的に行っているからである。このメリットは、緑陰を広くつくることと同時に、真ん中の幹の直上に電線がある場合、それを避けることも出来るからである、と以前上海の園林関係者が言っていた。同じ方法でつくられてはいるものの、これだけの歳月を経た巨木のプラタナスは、各々が実に個性的である。新宿御苑のプラタナスとはとても対照的。また、最近のランドスケープ設計の基本セオリーも、お行儀良く(もっと言えば真っ直ぐ垂直に立って)、均等に枝が四方に広がった、均質的な樹を、均一のピッチに植えていくというものが殆どである(もちろんこれは暗黙のデザイン的な傾向の話)が、そんな良い子の街路樹たちをあざ笑っているかのように、ここ上海のプラタナスはノビノビと羽根を広げている。それと相まって、樹間ピッチが短いため(平均5m程度)、緑陰がたっぷり出来るのと同時に、低い枝振りの存在感も増し、低層街区の連続の中で、独特のスケール感を生み出している。
a0073387_2044615.jpg

a0073387_2035820.jpg

a0073387_2042025.jpg

中国では、意外と風格のある樹木に出会うことが少ない。中国原産と言われるイチョウやメタセコイア、ユリノキなども、日本で見るほどの立派な樹勢のものには滅多にお目にかからない(特に上海近郊では)。上海の新しく開発された地区でも、建築は勢い良く堂々としていても、街路樹の多くはまだまだよそよそしく、ひ弱な印象を与えるものが殆ど。そこにきて、この地区のプラタナスの並木だけは、時間を感じさせ、これだけで街並に風格を与えていることは確かだ。次は冬に行った時、枝ぶりだけをもっと観察してみたい。
a0073387_2052580.jpg

[PR]
by mindscape-ltd | 2010-07-28 20:27 | 上海サンポ
<< きたまちしましま公園 芝生のランドスケープ  薄い膜... >>


link
Mindscape
以前の記事
ブログパーツ
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧