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mindscape travel_18 インドでリバサイ
最近知り合った建築家の内山章さんが、東京大田区の多摩川沿いを「リバサイ」と称して、川に向いたライフスタイルを提唱しておられて、僕自身もそのただ中に居を構える身として、勝手に影響を受けつつ、勝手にイメージを膨らませたりしている今日この頃である。しかし、川について考えれば考えるほど、どうしてもここではなく、あそこの川のあの場所で味わったあの強烈なイメージが蘇ってきてしまう。川が日常的でありながら非日常的なパワーに満ちているあの感覚。自分の中の究極のリバサイは、やはり、あれしかない。

僕もいろいろなところを旅行する中で、何度となく川や水辺に引き寄せられてきたことを思い出すが、あそこほど、川自身が特別なエネルギーを持っていて、特別なオーラを発している場所は他にない。まさにライフスタイルそのもの。いや、ここではスタイルという言葉は軽薄過ぎる。ライフが宿っていることは確かにせよ。スタイルは全く規定されておらず、むしろ極大の包容力を持っているのだ。
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ヒンドゥー教、仏教両宗教の聖地、釈迦が初めて説法を行ったとされるところの傍、国中の人々が沐浴に訪れ、さらにここで死を待つ人たちが大勢いるとされる。ここで死す者輪廻から解脱出来ると言い伝えられ、火葬場があり、その遺灰をこの川に流すことが、死者に対する最高の敬意とされる。生と死が同居し、最貧民から大金持ち、世界中からの観光客、様々な動物まで、ありとあらゆるモノが集結する場所。水が綺麗か汚いか、川辺の空間が格好いいか悪いか、そんなことを全く超越した場所。

20代の僕は、藤原新也の本に軽く触発され、「地球の歩き方」をバイブルのように握りしめ、お気軽な旅行気分でインドに飛び立った。最初に訪れたコルカタ(当時はカルカッタと呼んでいた)の駅前で、ゴミかと思うような人が一面ビッシリ駅舎の大空間に寝転がっている光景を目の当たりにし、足がすくみ、それから数日間、本当に来たことを後悔するようなことばかり続き、十分なインドの洗礼を受けた後、逃げるように夜行列車を乗り継ぎ、早朝夜明け前のワーナラーシー・ジャンクション駅に降り立った。そう、バイブルの「地球の歩き方」によると、夜明け前にここに着き、日の出を拝むのが流儀。が、次の瞬間に、またしても人の大洪水にわっーと呑みこまれ、鋭い目線でたかってくる物乞いやら子どもやらリクシャーやら、野良犬やらとを必死で振り払いながら、何とか前に進むも、気がつけば人の流れに身を任せ、一巡礼者となって川に向かって、真っ暗な道を黙々と何十分も歩き続けていた。

その道中は、恐怖心と好奇心が体内で格闘し、頭の中ではバイブルに書かれていたことを思い返し、先々での行動をイメージトレーニングしながら、胸騒ぎを抑えるのに必死となった。しかし、川に着いた途端、何とも言えない、とてつもない包容力のある、柔らかいモノに包み込まれ、今度は虚脱感と安堵感が交錯する不思議な感覚に陥った。川は夜明け前で真っ暗闇であったにも関わらず、人々がボートを探しはじめたり、着替えて沐浴準備に入ったりしている。

もはやバイブルに記された行動規範を全て忘れ、しばらくじっと川辺に佇んで、真っ暗な中、黒いモソモソ動く影だけを見ていた。やがて川の左手方向がうっすらと明るくなり、太陽が昇りはじめ、そこで初めて周囲の全容が見えてきた。何とも穏やかな世界。聖地というのは、もっと荘厳で畏怖の念を抱くような近寄り難い場所かと思いきや、意外にも極上のリゾート地のようなリラックスした雰囲気が漂い、人々の表情は至極柔らか。相変わらずの物乞いやら物売りの執拗な攻撃を受け続けたが、もはやこちらも寛容に微笑みながらそれらを追い払う、という余裕が生まれていた。
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気を取り直し、バイブルの指南に従って、今度は小舟に乗り船上から陸を眺める。皆それぞれに、沐浴をし祈りを捧げる人、体中泡だらけになって洗ってる人。その横の岸辺で寝そべる人。グループで歓談する人、一人ボーッとする人。乞食、花売り、全くもって何をしているか分からない人。牛や犬や猿までもが紛れている。このように実に様々な人、動物と各々の行為を、どれも全く違和感なく包み込むことの出来る、スゴイとこだ。

僕はそもそも、インドに来て、ムガル時代のカッコイイ城や宮殿の建築やら空間やらのデザインを見て、それがその先のデザインを考える上での肥やしになるのでは、といったことを考えていた。デザインは、空間を秩序立て、奇麗に整え、時に秩序に反するものを排除するような行為かと考えていた。しかし、この場所のこの状況を見ると、どうもその考えは根本的に間違っていたようだ。
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by mindscape-ltd | 2010-08-19 18:37 | travel
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