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辰山植物園
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上海西の郊外、松江区にある、上海余山国家旅遊度暇区は、月湖彫刻公園、余山森林公園、観楽園という上海最大の遊園地、ゴルフコース、ホテルなどを擁する、一大レクリエーションエリアとなっている。この中に、今年4月、新たに上海辰山植物園がオープンした。更に、今年は、万博に照準を合わせ、相次いで新たに地下鉄が開通、延長、この内、地下鉄9号線が、松江に通じ、このエリアのアクセスも飛躍的に向上した。万博とほぼ同時オープンであったため、あまり話題にならなかったが、私個人としては万博以上に待望していた辰山植物園を、お陰で、半日で見てくることが出来た。
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上海から江蘇省、浙江省を含むエリアは、今日一大経済特区に指定されている一方、古くから蘇州、烏鎮、周圧などの水郷が発達してきたように、長江河口の巨大デルタ地帯である。池や水路と陸、そして湿地帯が複雑に入り組む土地であるが、基本的に起伏も、高い山も殆ど無い平地である。しかし、この松江区の余山地区には、珍しく忽然と独立した山が幾つか散在している。山といっても、標高100m程度で、茫漠と平面的に広がる上海にあっては、こぢんまりとした山である。それでも、上海からは最も近い山であり、ちょっとした森もある。そのうちのひとつの山である辰山は、1950年代初頭から80年代中頃にかけては石の採石場となっていた場所で、その跡地を含めた200haの広大な敷地が植物園として今回整備されたものである。

全体のマスタープランは、国際コンペで当選した、ドイツのランドスケープ事務所、バレンタイン+バレンタイン。広大な敷地に散在する研究所、ホール、温室、各庭園を、リング状の道が結ぶという、明解なプランである。(→バレンタインのインタビュー
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この植物園の大きな特徴は、採石の岩肌が生々しく残る辰山と、その中に残された広さ約1ha、深さ30m程の広大な池による、微地形と、その中で作り出される微気候を利用した様々な植物の展示、更に元々の辰山に残された上海では珍しい雑木林の山、そして、その足下の長江デルタならではの海洋沿岸域の湿地帯である。採石場は、辰山の南西側と南東側二箇所に分かれており、南西側では、地下の採石部分が池となって、採石の岩肌を滝が流れ、この池に注ぐというダイナミックなランドスケープが作られ、その周辺に温帯地域の幅広い植物が植えられている。一方の南東側は、薬草中心のロックガーデンで、静かな景観となっている。両採石場は、元々トンネルでつながれ、今日もこのトンネルを公開しているが、私が訪れた時は、残念ながら閉鎖されていた。
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その代わりに高さ70m程の辰山に登ると、採石場以外の部分に残された雑木林の中を通り、ちょうど滝の上に出て、展望台から上海を遠目に一望することができる。雑木林では、エンジュなどの落葉樹に混ざって、ネズミモチやクスノキの大木なども多く見られる。上海にもこのような山があったのかと、新鮮に思うと同時に、ややもすると、日本の里山に入った感じと殆ど変わりないような印象も受ける(山としてのスケールは、日本的だ)。
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辰山の足下は、上海近郊にどこでも見られる、川と池の織りなす湿地帯が広がり、上海近郊の原風景が、とても綺麗に整備されていて、楽しくコンパクトに見ることが出来る。ススキやアシ、ガマなどイネ科の大型湿性植物が、とにかく中国的なスケールで展開する様子は迫力があり、植物の種類も、見せ方もとても考えられている、と感心する。上海市内の既存の植物園と比べても、この湿地を生かした植物園という意味で、辰山のほうが、より上海的と言える。デザイン的には、このような、自然「的」(もしくは原風景「的」)な部分と、展示的にハイライトされところ、そして広大な芝生面が適度に混合されていて、とても丁寧に計画されている感じである。この植物園を見るだけで、中国のランドスケープも、計画レベルにおいては、かなりの精度が実現されていることは確かだ(ちょっとしたディテールの精度はもう一つとしても)。最初は、あまりに茫漠と広すぎるのでは、とも思ったが、オーソライズされた植物園というエリアとして、このような湿地帯が広く保全されることには、大きな意味がある、と最終的に思えるようになった。しかし、当初この地域にあって、長江デルタの河口湿地域であることから、何となくラムサール条約に絡めた野鳥や湿地保全の目的かとも思っていたが、どうやらそれには関係していないようだ。長江デルタ地域でラムサール条約に登録されているのは、上海北側、長江河口の崇明島の東端のエリアのみである。長江デルタが、経済特区として指定されているためか、かなり消極的な登録状況と言わざる負えない。湿地に関する説明展示においても、同条約のことは一切出てこない。香港の湿地公園と対照的である。
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この地域、土地特性を十分に生かした植物園として、見応えは十分にあると思えるのだが、他にも世界中の植物を中心に植栽されたエリア、年中カラフルな花を植えた花壇、そして、現在建設中の、世界中の8つの気候帯を再現するという巨大な温室なども控えている。これらは、運営などの面を垣間見ても、やや無理をしている印象が否めない。しかし、植物園として、多少なりとも網羅的に植物を収集し、研究に供する意味合いと、一般的に幅広く公開するためには必要不可欠、ということなのであろう。全長100m、高さ30mはあろうかと思われる3棟の温室は、オープンしたあかつきには、相当のインパクトを持つことは確かだ。来る前に、採石場跡地に巨大温室と聞いて、もしやエデンプロジェクトのコピーでは、と警戒してみたが、この地形、地質をそれなりに上手く生かして計画されているところは、評価されて良いはずだ。季節変化を追って、今後も、何度でも訪れたい場所である。一方、最新の植物園として国際的なレベルで見るならば、先述の通り、湿地と言えば、鳥をはじめ、動物を含めた生態系、生物多様性との連関は欠かせないはずであるが、そのことに関する啓蒙が殆ど見えないところは、少し残念ではある。そうした要素が今後、ソフトウェアとして加わって行くのかどうかも見守りたい。
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by mindscape-ltd | 2010-10-25 23:45 | 上海サンポ
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