ウェスターガスファーブリック
アムステルダム中心部から北西に2kmほどの場所、約10ヘクタール程のガス工場跡地に2003年、「文化」をテーマとする公園がオープンした。公園と言っても、イベントスペース、映画館、オフィス、そしてバーにレストランなどを擁する複合施設である。ホームページを見ると、全く公園らしからぬ、エンターテイメントな雰囲気で、公園内で開催されているイベントのリストがずらりと並んでいる。 全体のコンセプトを「カルチュア」と「クリエイティブ」とし、工場としての建物が、60〜2500平米までの様々なイベントスペース、会議場、劇場などに改装し、時には屋外でのさらに大規模なイベントまでも含めて、貸出しを積極的に進め、公園の運営資金としていることが分かる。 しかし、日中イベントのない時にこの公園を訪れると、なんとも長閑で平和な雰囲気を漂わせている。このランドスケープは、アメリカのランドスケープアーキテクト、キャサリン・グスタフスンである。近年、WEST8を筆頭に、かなり元気の良いオランダのランドスケープの中で、かなり大人な、清楚さがデザインされている。シンプルに大きな芝生面と直線的な水の流れ、それもアムステルダム風の運河ではなく、より親水性の高いせせらぎである。また、保存されたガスホルダーの周りは、ワイルドな葦の湿原が広がり、心地よい緊張感の漂う、大らかな空間が完成している。 つまり、活発なこの公園アクティビティそのものと公園のデザインは、巧みに切り離されており、決してランドスケープデザインが、イベント的なアクティビティを誘発したりはせず、イベントをテンポラリーな要因として冷静に横に見て、あくまで緑と水を根源的にシンプルにデザインするという態度をとっているのだ。 また、ガス工場跡地といった歴史的、地理的コンテクストも、利用したり、補完したりもせず、例えば残された古い建物群と公園のランドスケープは、適度な対峙関係を構築しているように思える。決して無視をしているわけではないが、すり寄ることもせず、レイアウトとしてのバランスは見事に整っているものの、ある種の不調和、しかも、見ていて決して不快ではない、不協和音のような緊張感がある。例えば、これはWEST8のスコーブルグプレイン(ロッテルダム)と極めて対照的である。勿論、ロケーションやポテンシャルは異なるが、広場内には、ベンチとクレーンのガントリーを思わせるフォリー以外に要素は無いものの、明らかに都市のアクティビティと関連づけられた舗装パターンや、ロッテルダムの場所性を斬新に翻訳している鉄のフォリーは、やはりアクティビティとコンテクストに対する深い敬意が読み取れるが、ここでは、公園という原初的な体験、どこまでも奇麗な水と緑という要素が、一瞬アムステルダムにいることを忘れさせるような場所としている。
by mindscape-ltd
| 2008-09-24 23:08
| travel
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