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ジョン・F・ケネディ・メモリアル

ラニーミードは、ロンドンの南西郊外、ウィンザー城に近い、テムズ河畔に位置する約100ヘクタールの緑地で、1215年にジョン王がマグナ・カルタに調印した場所として知られる。1931年、ナショナル・トラストの管理下に置かれ、1951年、第二次大戦の国内での戦死者メモリアル、1957年には、マグナ・カルタ・メモリアル、そして、1965年にジョン・F・ケネディ・メモリアルが、各々少し離れた森の中に建てられている。

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その中で、ジョン・F・ケネディ・メモリアルは、1965年、ケネディ暗殺事件を悼み、1エーカーの土地をアメリカに永久譲渡し作られたもので、ジェフリー・ジェリコによってランドスケープがデザインされている。ジェリコの初期の代表作とされるが、それ以前のモダニズム風のデザインとは明らかに異なり、ジェリコにとっての転機となったことをうかがわせる。そのデザインは、いくつかの全く異なるシーンの連続で構成されている。テムズ川に沿った草原を抜けると、控え目なゲートが森のエッジに現れる。このゲートが結界となり、静かな森の中に入ると、約200mほど、蛇行して先の見えない、上り坂のピンコロ石が敷き詰められたアプローチが続く。そして、森が開けてきた先に、記念碑の白い石が見える。それも正面に象徴的に現れるといよりは、木の陰から少しづつ姿を現す、といった感じである。記念碑に辿り着くと、その右手は、また草地が開け、遠くにはテムズ川も見渡せる。石碑そのものは、四角い石にぎっしりと文字が刻まれ、台座で浮かされていいる分、スッキリとモダンな印象をもたらす。そして、草原の方に目をやると、今度は、一直線に伸びる園路が、その先の草原を見晴らす2カ所の休憩スペースへと導く。

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確かに、上質で静謐な、ジェリコならではの空間性は瞬時に感じ取れるものの、これら連続的とも断続的とも思える微妙なシークエンスと、その背後にあるストーリーは、その場で意図を読み解くのは、かなり困難にも思える。ジェリコの著作によると、まずインスピレーションをジョン・バニヤンの「天路歴程」という寓話から得ているという。全体の道程は、人の生と死、そして魂を現す。森のアプローチは、人々の悲しみ、石碑は人々が背負った棺、理不尽を超えて、草原の園路が、家族の絆としての二箇所の玉座に導く。つまり、現世の鬱蒼とした森と、石碑を結界として、天につながる、ギリシャ神殿のような高度な調和の取れた世界という、ふたつ対照的な空間性を、シークエンスとして現している、というわけである。

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そう、こうした寓話的なシークエンスは、まさにイギリス風形式庭園そのものである。自然「的」な、奔放とした森や草原の中に、ギリシャ神殿のような究極的な調和世界が挿入される。しかし、ここでは過度に目を奪う仕掛け(イギリス庭園のフォリーに相当するもの)はなく、結節点には、ケネディの石碑があるだけであり、寓話を紐解くには、かなりの深い知性を要求される。

それにしても、一見、何の変哲も無い草原と森に思えるこの場所が、13世紀のマグナ・カルタから、20世紀のジョン・F・ケネディを経て、17世紀のジョン・バニヤンの寓話世界につながる意味の迷宮となっているあたり、とてもイギリスらしい混沌を秘めた場所である。

http://www.nationaltrust.org.uk/main/w-vh/w-visits/w-findaplace/w-runnymede.htm

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by mindscape-ltd | 2009-08-10 19:33 | travel
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