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カテゴリ:上海サンポ( 8 )
辰山植物園 ー 冬のススキ
上海で進行中のとあるプロジェクトで、イネ科の多年草を多用しようとしているが、冬の見栄えがクリティカルな課題となっている。ススキ類の冬の立ち枯れた様子は、確かに普通に見れば景観的な価値を損ねているとも言えるのだが、他種と織り交ぜるなど少し視点を変えればデザイン的には成立し得るのでは、となんとか主張を試みているのだ。辰山植物園のイネ科エリアでの冬の様子を観察し、その可能性を模索してみることに。

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シマススキ(Miscanthus sinensis 'Zebrinus') 中国語名:班叶芒

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イトススキ(Miscanthus sinensis 'Gracillimus') 中国語名:細叶芒 
葉も内に丸まって斑も消えるので、一見イトススキとシマススキの差は意外な程分からないが、よく見るとやはり葉の幅で見分けがつく。 

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イタリアングラス(Molinia cerulea ver.) 中国語名:沼湿草 
枯れて乾燥した時の穂の表情もススキとはかなり異なる。小穂の柄が広がらず、先端が縮れて丸まっている。

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シバムギ ”ロステ”(Panicum Virgatum 'Roste') 中国語名:柳枝稷“罗斯特”

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シバムギ ”ヘビーメタル”(Panicum Virgatum 'Heavy Metal') 中国語名:柳枝稷“重金”
キビ属の品種ものと思われる。小穂に長い柄があって、全体的に円錐型の花序をしているが、枯れると無数の小さな釣り鐘のようにも見えて、繊細でキレイ。

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パンパスグラス(別名:白銀ヨシ、Cortaderia selloana) 中国語名:蒲茅 
数少ない常緑種。2mを超える大型で、全体の穂も長い。

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矮性パンパスグラス(Cortaderia selloana 'Pumila')中国語名:矮生蒲茅

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エンジェル・ヘアー(Stipa tenuissima)中国語名:細茎針茅
スズメガヤ(Weeping lovegrass)の系統かと思っていたがどうも違ったようだ。

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チカラシバ(Pennistum alopecuroides (L.) Sprerg) 中国語名:狼尾草 
エノコロ草の系統であるがペンニセツム属。ペンニセツムとは「羽状の刺毛」とう意味らしい。中国では、白っぽい穂の狼尾草と、赤い穂の紅狼尾草があり、紅狼尾草は葉も赤い。が、枯れたら全くが差が分からない。

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ダンチク(Arundo donax) 中国語名:芦竹 
抽水の超大型。

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ガマ(ガマ科ガマ属 Typha latifolia) 中国語名:香蒲 

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辰山植物園ススキ系植物のエリアの冬(2月)と秋(10月)の比較
*植物名・学名は、標示のあったものはそれを、無かったものは推定(標示のあったものも、一部怪しい)
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by mindscape-ltd | 2011-03-01 23:52 | 上海サンポ
辰山植物園 ー 巨大温室
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冬の辰山植物園へ出かけた。目的は2つ。ひとつは、アジア最大級と宣伝する巨大温室がオープンしたのでそれを見ること。もうひとつは、あるプロジェクトの参考に、冬のイネ科植物を観察することだ。
(辰山植物園の古い記事はこちら

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巨大温室は「熱帯花と果実館」「沙生植物(サボテン多肉植物)館」「珍奇植物館」の3棟からなり、総面積は12608㎡、合計3000種の植物を展示している。その中で最大の「熱帯花と果実館」は、“花と果実”をテーマに、5521㎡を占め、風情花園、椰子広場、経済植物区で構成され、主に熱帯地方から集めた600種を展示。「沙生植物館」のテーマは“水利用する知恵”。4320㎡に、アメリカ、アフリカ、オーストラリアの3つの区に分けて、約1000種のサボテン、多肉植物を展示している。「珍奇植物館」のテーマは“生存と進化”。2767㎡に1400種の珍しい生態の植物を展示している。面積が大きいのもさることながら、いずれの温室も、幅が30~50mで幅が長さが60m~100mという、細長く、緩くカーブし、天井の尖った恐竜の胴体のような形をしているのが特徴である。細長い形状から、温室内の回遊動線がリニアに展開され、例えば熱帯温室では風情花園、椰子広場、経済植物区が、順番にドラマチックに景観が展開していく様子が少し新鮮な印象を与える。しかも緩いカーブが、少しだけ先のパースペクティブな見通しを遮るのも面白い。「珍奇植物館」は、中国でも南部では多く自生するクワ科のガジュマロが、しかも気根を複雑に巡らせて、石を抱いていたり、壁やアーチになっていたりして、面白い演出が施されいてるほか、現存する古代植物であるヘゴの巨木などがハイライトされている。
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by mindscape-ltd | 2011-03-01 01:10 | 上海サンポ
生態島へ
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長江の河口には、砂が堆積して出来た中洲の沖積島が3つほどあり、そのうちの最大のものが崇明島である。唐の時代、西暦620年頃から地上に姿を現し、今もなお堆積を続け、大きく成長ている。中洲といっても、面積は現時点で日本の沖縄本島とほぼ同じ、世界最大の沖積島である。島としても、中国でも、台湾を除き、海南島に次いで2番目の大きさとなっている。西暦700年頃から開拓され人が住み始めているが、近年まで長らくは、鄙びた農村、漁村であった。1958年に上海市の管轄となり、近年公布された、上海都市計画の上位計画である「大上海城市発展計画」においては、上海近郊に計画されている9つの衛生都市のひとつに指定されており、今後、本格的な開発が見込まれているところでもある。また、昨年、上海の浦東から、もう一つの中洲の島である長興島を経て、崇明島まで通じる全長25.5kmの長江大橋が開通し、アクセスも飛躍的に向上し、将来は地下鉄の延長計画もあるという。
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一方、この島は、特に東岸の東灘地区に広大な湿地を擁し、野鳥の飛来地であったことから、2002年ラムサール条約に登録され、自然保護対象地に指定された。胡錦涛が2004年にこの地を訪れ、自然保護の重要性を説いたとされ、以来、「生態島」と呼ばれるようにもなった。上海での開発の波が及ぶことを察知し、2005年頃からは、開発と生態系保全の両立を図る指針がいくつも上げられ、諸外国も積極的な協力に名乗り出てきた。例えば、2005年には、「中国フランス崇明生態島プロジェクト協議」が発足したり、2008 年には、イギリスのブラウン首相(当時)がここをわざわざ訪れ、環境対応モデル都市「生態城(エコシティ)」の開発を官民で 推進することを宣言したりと、開発、保全、投資といった思惑が交差しながら、注目が集まってきた地である。しかし、これらの計画のその後の進展は、よく分からない。上海市政府は、今年になって改めて、「崇明生態島建設綱要(2010-2020)」という10年計画を発表しているが、諸外国との連携には、詳しく触れられていない。
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さて、長江大橋の開通で、上海から1時間足らずで行けるようになったこの島に、早速出かけた。かつて船の発着所であった、中心部の城橋鎮や新河鎮エリアは、住宅、商業施設、工場などがかなり集積してきているが、橋の帰着点となる島の東側、陳家鎮は、新しい低層の住宅が低密度で建ち始めているいるものの、長閑な風景が広がっている。この島は、有機栽培の農産物でも有名で、そうした意識が、既に、特に上海の富裕層に広がってきており、わざわざ、ここまで野菜を買いに来る人も多いとのこと。所々にそのような野菜売りを見かける。
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ラムサール条約に登録された東灘は、さらにこの陳家鎮から25km北東で、タクシーで約40分の距離である。湿地の入口付近にはエコシティ政策の一環と思われる、風車が、相当数並んでいる。しかし、それでも広大なアシの茂る湿地では、たいした存在感にも感じない。4平方キロメートルを擁する東灘湿地には、約200種類もの野鳥の他に、甲殻類、両生類、爬虫類など150種類が生息しているという。また、絶滅危惧種に指定されている揚子江鰐(Alligator sinensis)10頭が実験的に放流されいてるとのこと。
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湿地の一部は、東灘湿地公園として、綺麗に整備されたエリアと、広大なアシ原の一部にボードウォークだけを設けたエリアがある。公園の方は、200haほどの敷地内に、遊覧船やレンタサイクル、カートなどが整備され、資料館、レストラン、展望台、地震観測所などの施設が散在し、ボードウォークや簡易な舗装の園路でつながっている。レンタサイクルでも、施設にたちよりながら一周すると、2時間は要する。野鳥に関するサインが所々にはあるものの、観察小屋のようなものはない。園路の脇には、数百メートルの間隔で休憩所が設けられており、ちょっとした造園的な造作がなされていたり、一部では、湿地を人工的につくったエリアがあるものの、全体としては、元来のアシ原だけの状態を見せている。公園の外際には、何故か大規模に、水杉(メタセコイヤ)や池杉などが植林されている部分もある。とにかく、見渡す限り、水平線(または地平線)の彼方に続くヨシ原だけで、十分に風景として楽しめる公園である。これだけの広さがあると、公園と一部のボードウォークがあるにせよ、それ以外が確実にサンクチュアリ化されていれば、野鳥の生息地にはもってこいだ。こういう場所は、公園としての下手な作り込みなどせず、これで十分である。施設なども抑えが効いていて好感が持てる。敢えてデザイナー根性で言えば、辰山植物園を訪れた時もそうだったが、生態系に関する展示やサインなどは、あまり充実していない。ビジターセンターの一部に鳥の剥製を展示している一室があったり、GPSを駆使して携帯電話にインフォメーションを送る仕掛けも導入されているものの、見せ方の工夫、解説の仕方がいまひとつである。生態系保護地区として、広大な自然を満喫するもう一つの選択的な楽しみ方として、東灘湿地全体の位置づけ、動植物の紹介を通じた生態系保全に関する啓蒙が、施設というより、むしろコミュニケーションデザインによって効果的になされるべき余地はある。
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ともあれ、中国で出会う自然は、何ともスケールが大きいので、日本のような狭い国土で自然と人の生活環境が常に近接している状況とは違って、自然と都市的な環境、そして農地のような中間的な環境以外に、持て余すような用途の定まらない広大な余剰域のような土地があるという状況で、環境や自然に対する危機的な意識があまり現実味を持っていないというのも、分からなくはない(アメリカもそうだが)。だからこそ、啓蒙的な活動が必要となるはずで、それはもはや施設的な構造物をつくるというよりは、最低限の造作で最大限の効果を生むようなデザインが必要となるはずだ。この湿地公園の地域的なポジションがかなり重要であることを考えればなおさら。
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by mindscape-ltd | 2010-12-02 21:16 | 上海サンポ
1933再び
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上海で、最も好きな場所のひとつになってしまいました。時間が少しでもあると足が向いてしまいます。土木構造物のような力強さとマッシブさ、80年近い時を刻んだ歴史的な厚み、コンクリートでありながら多角形とディテールが醸し出す、どことない柔らかい表情、迷路のようなプラン、内部と外部の連続感。。。屠殺場として使われていた様子は、実はあまり想像が出来ていないのだが。
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過去の記事→
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by mindscape-ltd | 2010-11-01 14:05 | 上海サンポ
辰山植物園
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上海西の郊外、松江区にある、上海余山国家旅遊度暇区は、月湖彫刻公園、余山森林公園、観楽園という上海最大の遊園地、ゴルフコース、ホテルなどを擁する、一大レクリエーションエリアとなっている。この中に、今年4月、新たに上海辰山植物園がオープンした。更に、今年は、万博に照準を合わせ、相次いで新たに地下鉄が開通、延長、この内、地下鉄9号線が、松江に通じ、このエリアのアクセスも飛躍的に向上した。万博とほぼ同時オープンであったため、あまり話題にならなかったが、私個人としては万博以上に待望していた辰山植物園を、お陰で、半日で見てくることが出来た。
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上海から江蘇省、浙江省を含むエリアは、今日一大経済特区に指定されている一方、古くから蘇州、烏鎮、周圧などの水郷が発達してきたように、長江河口の巨大デルタ地帯である。池や水路と陸、そして湿地帯が複雑に入り組む土地であるが、基本的に起伏も、高い山も殆ど無い平地である。しかし、この松江区の余山地区には、珍しく忽然と独立した山が幾つか散在している。山といっても、標高100m程度で、茫漠と平面的に広がる上海にあっては、こぢんまりとした山である。それでも、上海からは最も近い山であり、ちょっとした森もある。そのうちのひとつの山である辰山は、1950年代初頭から80年代中頃にかけては石の採石場となっていた場所で、その跡地を含めた200haの広大な敷地が植物園として今回整備されたものである。

全体のマスタープランは、国際コンペで当選した、ドイツのランドスケープ事務所、バレンタイン+バレンタイン。広大な敷地に散在する研究所、ホール、温室、各庭園を、リング状の道が結ぶという、明解なプランである。(→バレンタインのインタビュー
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この植物園の大きな特徴は、採石の岩肌が生々しく残る辰山と、その中に残された広さ約1ha、深さ30m程の広大な池による、微地形と、その中で作り出される微気候を利用した様々な植物の展示、更に元々の辰山に残された上海では珍しい雑木林の山、そして、その足下の長江デルタならではの海洋沿岸域の湿地帯である。採石場は、辰山の南西側と南東側二箇所に分かれており、南西側では、地下の採石部分が池となって、採石の岩肌を滝が流れ、この池に注ぐというダイナミックなランドスケープが作られ、その周辺に温帯地域の幅広い植物が植えられている。一方の南東側は、薬草中心のロックガーデンで、静かな景観となっている。両採石場は、元々トンネルでつながれ、今日もこのトンネルを公開しているが、私が訪れた時は、残念ながら閉鎖されていた。
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その代わりに高さ70m程の辰山に登ると、採石場以外の部分に残された雑木林の中を通り、ちょうど滝の上に出て、展望台から上海を遠目に一望することができる。雑木林では、エンジュなどの落葉樹に混ざって、ネズミモチやクスノキの大木なども多く見られる。上海にもこのような山があったのかと、新鮮に思うと同時に、ややもすると、日本の里山に入った感じと殆ど変わりないような印象も受ける(山としてのスケールは、日本的だ)。
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辰山の足下は、上海近郊にどこでも見られる、川と池の織りなす湿地帯が広がり、上海近郊の原風景が、とても綺麗に整備されていて、楽しくコンパクトに見ることが出来る。ススキやアシ、ガマなどイネ科の大型湿性植物が、とにかく中国的なスケールで展開する様子は迫力があり、植物の種類も、見せ方もとても考えられている、と感心する。上海市内の既存の植物園と比べても、この湿地を生かした植物園という意味で、辰山のほうが、より上海的と言える。デザイン的には、このような、自然「的」(もしくは原風景「的」)な部分と、展示的にハイライトされところ、そして広大な芝生面が適度に混合されていて、とても丁寧に計画されている感じである。この植物園を見るだけで、中国のランドスケープも、計画レベルにおいては、かなりの精度が実現されていることは確かだ(ちょっとしたディテールの精度はもう一つとしても)。最初は、あまりに茫漠と広すぎるのでは、とも思ったが、オーソライズされた植物園というエリアとして、このような湿地帯が広く保全されることには、大きな意味がある、と最終的に思えるようになった。しかし、当初この地域にあって、長江デルタの河口湿地域であることから、何となくラムサール条約に絡めた野鳥や湿地保全の目的かとも思っていたが、どうやらそれには関係していないようだ。長江デルタ地域でラムサール条約に登録されているのは、上海北側、長江河口の崇明島の東端のエリアのみである。長江デルタが、経済特区として指定されているためか、かなり消極的な登録状況と言わざる負えない。湿地に関する説明展示においても、同条約のことは一切出てこない。香港の湿地公園と対照的である。
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この地域、土地特性を十分に生かした植物園として、見応えは十分にあると思えるのだが、他にも世界中の植物を中心に植栽されたエリア、年中カラフルな花を植えた花壇、そして、現在建設中の、世界中の8つの気候帯を再現するという巨大な温室なども控えている。これらは、運営などの面を垣間見ても、やや無理をしている印象が否めない。しかし、植物園として、多少なりとも網羅的に植物を収集し、研究に供する意味合いと、一般的に幅広く公開するためには必要不可欠、ということなのであろう。全長100m、高さ30mはあろうかと思われる3棟の温室は、オープンしたあかつきには、相当のインパクトを持つことは確かだ。来る前に、採石場跡地に巨大温室と聞いて、もしやエデンプロジェクトのコピーでは、と警戒してみたが、この地形、地質をそれなりに上手く生かして計画されているところは、評価されて良いはずだ。季節変化を追って、今後も、何度でも訪れたい場所である。一方、最新の植物園として国際的なレベルで見るならば、先述の通り、湿地と言えば、鳥をはじめ、動物を含めた生態系、生物多様性との連関は欠かせないはずであるが、そのことに関する啓蒙が殆ど見えないところは、少し残念ではある。そうした要素が今後、ソフトウェアとして加わって行くのかどうかも見守りたい。
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by mindscape-ltd | 2010-10-25 23:45 | 上海サンポ
上海のプラタナス並木
ここ最近月1回ペースで通ってる上海。でも、街をゆっくり歩いたりといった時間など当然なく、打合せや現場見学程度で終わってしまうのが常だが、今回珍しく衝山路、復興路、淮海路付近の旧フランス租界地区を、日中ちょっとだけ歩く機会があった。実はこの辺を歩くのは、仕事で上海に来るようになる以前以来、約10年ぶりであったことに気がついた。(タクシーでは何度か通過しているが)噂通り、以前より格段とセンスの良いショップなどが増え、歩きやすい雰囲気になっている。この地区を特徴づけているのは、フランス租界時代に造られた古い建築とプラタナスの並木である。
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世界の4大街路樹のひとつと言われるプラタナス(他は、ニレ、ボダイジュ、マロニエ)。ほぼヨーロッパ全域、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリアなど温帯地域のほぼ全域で見られる。しかし、これらの地域で街路樹として見られるプラタナス(鈴懸の木)の多くは、正確にはモミジバスズカケノキ(Platanus x acerifolia)(イギリス英語でLondon Planeと呼ばれるもの)という交配種である。原種のプラタナス(Platanus orientalis)は、西アジアからヒマラヤ付近の原産といわれ、500年以上前のペルシャ庭園や北インドの庭園にも頻繁に登場しており、この地域では現在でも普通に目にするが、日本、中国には比較的少ない(もちろん自生はしてない)。もうひとつのモミジバスズカケの原種、アメリカスズカケノキ(Platanus occidentalis)のほうは、北米の特に北の方で見られ、かつてはウォールストリートのニューヨーク証券取引所付近にもあったそうで、1792年設立にあたっての協定は「すずかけ協定」(Buttonwood agreement:Buttonwoodはアメリカ英語のプラタナス)と言われる。(しかし、アメリカでも私の印象では今日の一般的な街路樹などにはモミジバの方が多い気がする)

さて、このプラタナスが中国に最初に導入されたのは、この上海で、1902年、フランス租界のAvenue de Joffre (現在の淮海路)が整備されるに際してのことである。このため、中国ではプラタナスのことを俗に「法桐」(法はフランスのこと)と呼んでいる。中国式の正式名称は「二球懸鈴木」。「二球」は、モミジバスズカケを表し、集合果が果軸に2個程度つくから。つまり他に、「一球懸鈴木」がアメリカスズカケ(集合果が果軸に1個)、「三球懸鈴木」がスズカケノキ(集合果が果軸に3個以上つくから)と区別しているようである。当時の写真を見ると、高さ5m強、幹の太さが20cmくらいに見える。今日高さは10m以上、幹の直径は太いもので80cmくらい。
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このように、プラタナスといえば、鈴懸けの名の由来となっている実も特徴的であるが、街路樹としては、鹿の子のような迷彩模様の樹肌が他にない存在感を現す。そして幹や大枝は、なんともモッチリとした、独特の膨らみ方をして、枝振りも自由奔放にノビノビしている。さらに、上海のプラタナスが特異なのは、その枝張り(枝の横方向の伸び)の大きさである。よく見ると、樹高はそれほど高くない(とはいっても10mあるものはザラだ)が、しかしある高さから枝が3方くらいに広がって、枝張りも、大きいものは10mに達する。ちょっと小さめの道であれば、両側からすっぽり天蓋になって覆われ、見事な木陰の通りとなっている。これは、芯打ちという、幹の先端を早い時期に切ってしまい、枝を横に出させて伸ばすという仕立て方を意図的に行っているからである。このメリットは、緑陰を広くつくることと同時に、真ん中の幹の直上に電線がある場合、それを避けることも出来るからである、と以前上海の園林関係者が言っていた。同じ方法でつくられてはいるものの、これだけの歳月を経た巨木のプラタナスは、各々が実に個性的である。新宿御苑のプラタナスとはとても対照的。また、最近のランドスケープ設計の基本セオリーも、お行儀良く(もっと言えば真っ直ぐ垂直に立って)、均等に枝が四方に広がった、均質的な樹を、均一のピッチに植えていくというものが殆どである(もちろんこれは暗黙のデザイン的な傾向の話)が、そんな良い子の街路樹たちをあざ笑っているかのように、ここ上海のプラタナスはノビノビと羽根を広げている。それと相まって、樹間ピッチが短いため(平均5m程度)、緑陰がたっぷり出来るのと同時に、低い枝振りの存在感も増し、低層街区の連続の中で、独特のスケール感を生み出している。
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中国では、意外と風格のある樹木に出会うことが少ない。中国原産と言われるイチョウやメタセコイア、ユリノキなども、日本で見るほどの立派な樹勢のものには滅多にお目にかからない(特に上海近郊では)。上海の新しく開発された地区でも、建築は勢い良く堂々としていても、街路樹の多くはまだまだよそよそしく、ひ弱な印象を与えるものが殆ど。そこにきて、この地区のプラタナスの並木だけは、時間を感じさせ、これだけで街並に風格を与えていることは確かだ。次は冬に行った時、枝ぶりだけをもっと観察してみたい。
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by mindscape-ltd | 2010-07-28 20:27 | 上海サンポ
老場坊1933
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上海ネタでもうひとつ。2008年、上海にまた興味深いスポットが誕生していた。「老場坊1933」と言う名前のその場所は、かつて屠殺場があった場所で、1933年に建設された建築をそのまま残し、ギャラリー、イベント、商業、オフィスの複合施設としてリノベーションしたものである。上海にはこれまで、新天地、田子坊、莫千山路50号(M50)など、古い建物をリノベーション、コンバートした施設、地区は幾つかある。新天地は商業的な色が濃く、田子坊、M50は、アーティストの活動から発生して、過度に洗練されていない素朴な良さを残しており、いずれも、雰囲気は異なるものの、古の上海らしさと現代的な用途を混合した面白い場所をつくっている。しかし、この「老場坊1933」は、同じリノベーションでも、これらとはかなり異質である。この古い建物自体が強烈な個性を持っているからである。古き良きものと現代の混合といった次元を超え、どこか未来的な様相すら漂わせている。正面ファサードの幾何学的ラティスに始まり、中央の円形の建物と、周囲と縦横に繫がる空中回廊、上に広がる柱とシャープなコンクリートの表情。方向感覚を失うような迷宮的なプラン。ここまで強烈な個性を持つと、少々商業的につくり変えてみても、決して新天地のような平和な商業施設にはならない!
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この建築、解説によると、1933年、当時の上海自治政府が、イギリスからバルフォアという建築家を呼び、300万ドルを掛け、つくらせたものであるという。使用したセメントはイギリスのポーツマスから取り寄せ、50cmの厚さのコンクリートによって、自然空冷システムをつくるなど、当時の最先端、最高の技術により、世界最大規模の屠殺場をつくったとされている。しかしこの解説はかなり不可解である。色々と調べてみても、イギリスのこの時代にバルフォアという名で、これほど先鋭的なデザインをしそうな建築家は見当たらない。では建築家ではないとして、初代上海領事のジョージ・バルフォアは、1893年に没しているので違う。バルフォア宣言で有名なアーサー・ジェームス・バルフォア(「バルフォア宣言」で有名)も、同時代ではあるが恐らく無関係。もう一人、エンジニアで国会議員、ポーツマス出身のジョージ・バルフォアという人物がいて、今でも現存するバルフォア・ベッティという建設会社の創始者。この人物の可能性もあるが、Web上で調べた限り、彼のキャリアの中には、上海との関係は一切出てこない。上海の建築史において、1920Sに外灘のネオクラシックの建築群が完成し、30Sに入り、アメリカからのアールデコの影響を受けた建築群が出始めるといった通説の中で、正面のファサードにこそ、アールデコ的な装飾を見る事が出来るとしても、内部の空間性はそれだけでは説明がつかない。1933年と言えば、バウハウスが閉校した年であるが、イギリスでは、バスホルド・リベトキンのテクトンが活躍していた時代で、そうした影響が読めなくもない。恐らくは、もっと特殊な経緯がありそう。(誰か、知っていたら教えて下さい)

→以下に詳しい解説有り
http://www.sbfnet.cn/useful/history/21.html

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さてこの施設、イベント、商業、オフィスの複合施設としてリノベーションしたもの、とされているが、今の時点でも、見たところ半分近くが空室のようである。特にオフィススペースとおぼしき部分は、殆ど空いている。イベントでは盛況とも聞くが、やはりオフィスとしては使い難いという噂もある。極めて堅牢なつくりと、かつて牛が歩いた細くて高い塀の通路。このような建築を残したこと自体に大いなる価値を認めるとすれば、当初のコンセプトを継続し、維持していって欲しいと願うが。
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by mindscape-ltd | 2010-06-04 23:44 | 上海サンポ
世博
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上海万博に行ってきました。最初の頃こそ、客の入りが鈍いと、日本のマスコミも嬉しそうに報道していましたが、ここに来て、政府発揚か、連日30万人超えの大盛況。各パビリオンも長蛇の列、列の最後尾に辿り着くのもたいへんな状況となっており、時間もあまり無かったので、比較的すいていた城市最佳実践区と主題館、万博文化中心などを巡り、あとはひたすら歩いて会場の自体を観察することにしました。

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城市最佳実践区などもそれなりに見所はあって、楽しめましたが、何故空いていたのか。エリアが一番端っこだったのもあるのでしょうが、後で分かったのは、皆が各国館に押し寄せる目的のひとつは、各国のスタンプをパスポート等に押してもらうこと。スタンプラリーってやつですね。愛知万博でもあったと思いますが、見てると子どもよりも、いい歳の大人がスタンプ台に群がってる。この心境、今度分析してみたい。。

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城市最佳実践区や文化中心などは色々なところで、既に語られているので、主題館について感想を書いてみます。

主題館(テーマ館)は、中国館とは別に、主催者である中国政府が先導的に今万博の主題に沿った展示を行うパビリオンで、敷地内に「城市足跡館(都市の歴史)」「城市未来館(都市の未来)」「城市人館(都市と人)」「城市生命館(都市の生活)」「城市地球館(都市と地球)」と5つあり(人、生命、地球はひとつの建物の中)、いずれも都市の万博を意識して「都市」を考えさせる仕組みを提示しています。愛知万博では、場所柄、漠然と「環境」を唱っていましたが、それよりもテーマが絞り込まれて分かりやすかった気がします。「中国館」では、中国そのもののアイデンティティを、他国と相対的に提示しようとする意図が明確なのに対して、これらの主題館は、「都市」を一般的に扱い、様々な都市を取り上げ、都市共通の課題を抽出しようとしています。

そこに展示されている内容は、建前が含まれているとはいえ、中国(政府)の都市に対する、過去から未来までの思考を読み取ることが出来ます。そして、総じて、都市の「多様性」が強調されている印象を受けました。例えば、城市未来館では、中国の丹山、ドイツのフライブルグ、タンザニアのダルエスサラーム、アメリカのサンディエゴ、オーストラリアのキャンベラのプランニングを紹介し、調和ある経済発展、自然エネルギー導入、都市衛生の向上、移民問題、インフラ整備など各地の課題をパラレルに見せ、各都市(各国)の特殊性と共通性が何となく見えてくるという見せ方をしています。城市生命館では、ガーナ、アメリカ、オーストラリア、オランダ、中国の家族(単身者も含め)がパラレルに登場し、やはり生活スタイルの差や共通点を浮き出させています。結論や、あるべき姿を強引に提示する、といった、これまでの中国にありがちなプレゼンスタイルは影を潜め、この多様な都市の在り方、有り様をそのまま見せるという見せ方は、一見、中国も大人になったなぁ、と感じさせるものがあります。しかし、気になるのは、ここで登場する人たちが、かなり受動的な都市的ライフスタイルに填ったように見せられていることです。政治的なスタンスが見えないこと、イスラム圏の生活者が殆ど登場しないことなど、いわゆるグローバリズムの流れに沿った「都市」が描かれ過ぎている気がします。つまり、グローバルスタンダードに平均的な「幸福感」が描出されている感が否めません。城市未来館で見せていた都市の差も、ひとつのリニアな流れの中での多様さという程度に解釈することも可能です。多様性の多様の許容度が限定されている、と思えなくもない。翻って、中国の国内が多様な人種・生活様式の差(格差)を抱え、大小のいざこざが耐えないと言われる現実に照らすと、特定の幅の中での多様性は大いに許容され得る、が、そこから逸脱するのは許されない、というメッセージにも見えます。つまり、画一的多様性を暗に誘導している、と。但し、こうしたスタンスは、中国だけが批判されることでも無く、欧米でもありがちなのも事実でしょう。

さて、パビリオンから外に出て、万博会場内を歩くと、中国の国内各地から来たとおぼしき、実に様々な人々がいます。それを少し観察するだけで、城市人館で見せられた人達より、よほどリアルな人の表情が見られます。そして、未だ未だ中国はグローバルな画一的多様性には程遠い、という光景が多々見られます。ベンチで寝転がる人、タンを吐く人、行列に横入りする人、禁煙と書かれたサインの前で一服する人、パビリオンの中での映画の上映中に大声で携帯で話す人、等々。自分の直ぐ横でやられると不愉快極まりないですが、少し端で見ている分には、微笑ましく、逞しくすら思えることもあります。良くも悪くもこの国は、未だ未だグローバル・スタンダードに侵されていません。彼らに政府のメッセージは届いているのかどうか。

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最後に、万博会場そのものの空間構成、プランニングについて。これも既に皆さん言ってましたが、その通り、かなりがっかり。万博会場は、閉会後を見越して、街の骨格が既に形成されています。いくつかのパビリオンと公園や高架橋などは、そのまま利用するとのことですが、特に新しい上海を予感させるコンセプトは見当たりません。都市デザインスケールでのランドスケープという思考も皆無に近い。普通の直線的な道路が格子状に続くのみ。しかもスケール感が巨大過ぎて、万博会場でなければ歩けるような空間にも思えない。機能的であるようにも見えません。パビリオンの配置のし易さと、その後の各ブロックの転用(転売)のし易さの表れと言えばそれまでですが、敢えて中国流と解釈すれば、主導的で網羅的なプラニングというものを指向することには最初から興味など無く、中国は常に、対処療法と、局部処方的な発想で、その時々を乗り切って行くのでしょうか。方向性を見せるのは、結果であって、先ではない。これを居直って言えてしまうところは、ある種の強みかもしれません。
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by mindscape-ltd | 2010-06-04 12:26 | 上海サンポ


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