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生態島へ
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長江の河口には、砂が堆積して出来た中洲の沖積島が3つほどあり、そのうちの最大のものが崇明島である。唐の時代、西暦620年頃から地上に姿を現し、今もなお堆積を続け、大きく成長ている。中洲といっても、面積は現時点で日本の沖縄本島とほぼ同じ、世界最大の沖積島である。島としても、中国でも、台湾を除き、海南島に次いで2番目の大きさとなっている。西暦700年頃から開拓され人が住み始めているが、近年まで長らくは、鄙びた農村、漁村であった。1958年に上海市の管轄となり、近年公布された、上海都市計画の上位計画である「大上海城市発展計画」においては、上海近郊に計画されている9つの衛生都市のひとつに指定されており、今後、本格的な開発が見込まれているところでもある。また、昨年、上海の浦東から、もう一つの中洲の島である長興島を経て、崇明島まで通じる全長25.5kmの長江大橋が開通し、アクセスも飛躍的に向上し、将来は地下鉄の延長計画もあるという。
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一方、この島は、特に東岸の東灘地区に広大な湿地を擁し、野鳥の飛来地であったことから、2002年ラムサール条約に登録され、自然保護対象地に指定された。胡錦涛が2004年にこの地を訪れ、自然保護の重要性を説いたとされ、以来、「生態島」と呼ばれるようにもなった。上海での開発の波が及ぶことを察知し、2005年頃からは、開発と生態系保全の両立を図る指針がいくつも上げられ、諸外国も積極的な協力に名乗り出てきた。例えば、2005年には、「中国フランス崇明生態島プロジェクト協議」が発足したり、2008 年には、イギリスのブラウン首相(当時)がここをわざわざ訪れ、環境対応モデル都市「生態城(エコシティ)」の開発を官民で 推進することを宣言したりと、開発、保全、投資といった思惑が交差しながら、注目が集まってきた地である。しかし、これらの計画のその後の進展は、よく分からない。上海市政府は、今年になって改めて、「崇明生態島建設綱要(2010-2020)」という10年計画を発表しているが、諸外国との連携には、詳しく触れられていない。
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さて、長江大橋の開通で、上海から1時間足らずで行けるようになったこの島に、早速出かけた。かつて船の発着所であった、中心部の城橋鎮や新河鎮エリアは、住宅、商業施設、工場などがかなり集積してきているが、橋の帰着点となる島の東側、陳家鎮は、新しい低層の住宅が低密度で建ち始めているいるものの、長閑な風景が広がっている。この島は、有機栽培の農産物でも有名で、そうした意識が、既に、特に上海の富裕層に広がってきており、わざわざ、ここまで野菜を買いに来る人も多いとのこと。所々にそのような野菜売りを見かける。
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ラムサール条約に登録された東灘は、さらにこの陳家鎮から25km北東で、タクシーで約40分の距離である。湿地の入口付近にはエコシティ政策の一環と思われる、風車が、相当数並んでいる。しかし、それでも広大なアシの茂る湿地では、たいした存在感にも感じない。4平方キロメートルを擁する東灘湿地には、約200種類もの野鳥の他に、甲殻類、両生類、爬虫類など150種類が生息しているという。また、絶滅危惧種に指定されている揚子江鰐(Alligator sinensis)10頭が実験的に放流されいてるとのこと。
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湿地の一部は、東灘湿地公園として、綺麗に整備されたエリアと、広大なアシ原の一部にボードウォークだけを設けたエリアがある。公園の方は、200haほどの敷地内に、遊覧船やレンタサイクル、カートなどが整備され、資料館、レストラン、展望台、地震観測所などの施設が散在し、ボードウォークや簡易な舗装の園路でつながっている。レンタサイクルでも、施設にたちよりながら一周すると、2時間は要する。野鳥に関するサインが所々にはあるものの、観察小屋のようなものはない。園路の脇には、数百メートルの間隔で休憩所が設けられており、ちょっとした造園的な造作がなされていたり、一部では、湿地を人工的につくったエリアがあるものの、全体としては、元来のアシ原だけの状態を見せている。公園の外際には、何故か大規模に、水杉(メタセコイヤ)や池杉などが植林されている部分もある。とにかく、見渡す限り、水平線(または地平線)の彼方に続くヨシ原だけで、十分に風景として楽しめる公園である。これだけの広さがあると、公園と一部のボードウォークがあるにせよ、それ以外が確実にサンクチュアリ化されていれば、野鳥の生息地にはもってこいだ。こういう場所は、公園としての下手な作り込みなどせず、これで十分である。施設なども抑えが効いていて好感が持てる。敢えてデザイナー根性で言えば、辰山植物園を訪れた時もそうだったが、生態系に関する展示やサインなどは、あまり充実していない。ビジターセンターの一部に鳥の剥製を展示している一室があったり、GPSを駆使して携帯電話にインフォメーションを送る仕掛けも導入されているものの、見せ方の工夫、解説の仕方がいまひとつである。生態系保護地区として、広大な自然を満喫するもう一つの選択的な楽しみ方として、東灘湿地全体の位置づけ、動植物の紹介を通じた生態系保全に関する啓蒙が、施設というより、むしろコミュニケーションデザインによって効果的になされるべき余地はある。
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ともあれ、中国で出会う自然は、何ともスケールが大きいので、日本のような狭い国土で自然と人の生活環境が常に近接している状況とは違って、自然と都市的な環境、そして農地のような中間的な環境以外に、持て余すような用途の定まらない広大な余剰域のような土地があるという状況で、環境や自然に対する危機的な意識があまり現実味を持っていないというのも、分からなくはない(アメリカもそうだが)。だからこそ、啓蒙的な活動が必要となるはずで、それはもはや施設的な構造物をつくるというよりは、最低限の造作で最大限の効果を生むようなデザインが必要となるはずだ。この湿地公園の地域的なポジションがかなり重要であることを考えればなおさら。
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by mindscape-ltd | 2010-12-02 21:16 | 上海サンポ


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