ヴィランドリー城の菜園
ロワール河一帯に点在する中世の城館のひとつ、日本人にもたいへん人気の観光地である、このヴィランドリー城は、1536年、フランス国王フランソワ1世の財務大臣を務めたジャン・ル・ブルトンによって築城されるも、付属する露壇型のルネサンス様式の庭園がツーリストをことのほか来訪者を楽しませている。「菜園」を十文字など整形区画に栽培する手法も、中世の修道士の伝統そのものであるから、中世からルネサンス期の遥かな時間軸を遡るのに絶好の空間であるかに思われる。しかし、この庭園の解説を丁寧に読むと、20世紀初頭に大規模な造成工事がなされ、現在の庭がデザインされ、つくられたということが記されている。 そしてこの拡張性は実際、子どもの遊び場に供する「芝生広場」や、「クマシデの迷路」などがつい近年に追加されていることからも、実践されているのだ。城館や庭の設備の修復、日々の刈り込みや植え替えなど、歴史建造物ゆえのオリジナリティの尊重に加えて、植物の成長と同時に、庭自体の変化と進化を許容すること、これがこの庭の生命維持システムなのである。 #
by mindscape-ltd
| 2008-09-01 22:51
| travel
#02 ポートラックハウス
スコットランド南部、ダンフリーズという街の郊外に、チャールズ・ジェンクスがデザインした、1年に一日だけ公開される、とても魅力的な庭園がある。 マギーは、中国庭園の研究家であったと同時に、自身が乳癌で余命宣告をされた経験から、癌患者の精神的フォローをする施設の設立を構想、1995年、マギーは他界するが、その後ジェンクスが遺志を継ぎ、施設はマギーセンターとして、現在イギリス内4カ所に設立されている。 ジェンクスの著作は、どれも、単に既往の建築状況を分析・批評しているというより、さすがに「ポストモダン」理論を起動させた張本人ただけに、並の建築家やデザイナーよりも、数歩も先を行くような先見性と創造性を内蔵している。文章全体を支配するパワーと、ある種の楽観主義的雰囲気が、ビジネス書を読むかのような前向きなビジョンと活力さえ与える。ジェンクスの著書は、建築学の歴史書というよりも、未来書であって、自在に学術領域を横断し、自然科学から社会学、政治学にまで思考回路を巡らせ、建築の、そして社会の断面を明快に炙り出す。そして、建築やデザインを下手に規定し、定義することはなく、細部の精密さや洗練性よりも、もっと大局を追跡して行くのだ。建築の解析は、建築家の意図の深読みというよりは先読み、先の先読みによる跳躍(ジャンプ)を繰り返す。まさにジェンクスの文章こそが、ポストモダンよりも、よほど先のユニバースを見据えているということだ。 #
by mindscape-ltd
| 2008-08-29 17:28
| travel
|
|||||||
ファン申請 |
||