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ガジュマロ
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ベンジャミンやガジュマロなどイチジク属の木で、籐の編み物やトラスの柱のような不思議な形状に仕立てた観葉植物を見たことがあるだろうか?個人的に、見た目の趣味が良いと思わないが、この木の特徴を生かしたつくりものとしては、ちょっと面白い。バニヤンというインドボダイジュの系統のこれらの木は別名「絞め殺しの木」とも呼ばれ、伸びた幹枝から気根を垂らし、それが地面に達すると、今度は上から舞い降りた幹のようになって、元々下から伸びた幹を締め付けて行く。他の木に着生して絞め殺すこともあるが、自らの元の木をも殺す。熱帯から亜熱帯において、熾烈な光の獲得競争の中で、このような生活形を獲得してきたと言われる。この性質を上手く利用し、上から出た気根をネット状に仕立てて、最後に、元々の幹を腐らせて取り除くと、中が空洞の鉄塔のような仕立ての観葉植物にもになるわけだ。バニヤンよ呼ばれるインドボダイジュの系統は、ヒンドゥー教、仏教を通じて聖木とされ、寺院等に好んで植えられているのは有名であるが、中でもチャイニーズ・バニヤン(Chinese Banyan)と言われる、ガジュマロ(Ficus microcarpa)は、更に生存力が強く、コンクリート構造物の上でも発芽し、旺盛に成長することで知られる。カンボジアのアンコールワットでは、寺院の石の土台から建物を覆うように生えていたり、日本では、屋久島の中間川の下流にある通称「中間ガジュマロ」という、ネット状で真ん中にトンネルまであるユニークなガジュマルが存在する。
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元々は、日本の九州南部辺りから沖縄、台湾、中国の南部、マレー半島、スリランカ、オーストラリアまで、亜熱帯から熱帯にかけて幅広く分布し、成長が早く、広い枝張りで豊かな緑陰を形成することから、北アメリカの南部(ハワイを含む)、から南アメリカの諸都市でも植えられてきた。特に19世紀末にはリオデジャネイロの都市計画において公園を中心に計画的に多く導入された。しかしながら、鳥を媒介とした旺盛な繁殖力が、在来種を脅かしはじめたと言われ、これらの国では、今や、危険な侵略者とされてしまっている。一方、アジア諸国では、先のような仕立てや、盆栽、一般的な観葉植物としてポピュラーで、中国南部の各都市(福州、アモイ、スワトウ、広州など)では、最も一般的な街路樹となっている。仕立てがしやすい分、お行儀良く管理された木も多い(特に中国本土の南部の都市)が、台湾や香港では、何故か街中でも、ワイルドな木に出会うことが多い。

香港九龍半島側随一の繁華街、尖沙咀(チムサーチョイ)辺りから彌敦道(ネイザンロード)を北に向かって歩き、重慶大厦を過ぎて、もう1ブロックほど進むと、急に通りが暗くなる一角がある。西側は九龍公園の入口から低層の商店街が続く通りであるが、車道と歩道の境界部に、大きなガジュマルが何本も、恐竜のように、高く、幅も広く、奔放に伸びている。よくみると、やはり気根が幹に絡みつき、動物の血管か、または機械の複雑な配線が外部に露出したかのような幹を勝手な方向に伸ばしている。現在ここにあるガジュマロ(中国名は「细叶榕」)は23本、1908年に植えられたものらしく、現在推定樹齢は70〜120年、幹周り1.2m、高さ16m 、枝張り11m(各々平均)ということだ。1950年代前までは、彌敦道の南から北にかけて、一定ピッチで3km近い距離をかけて、ぎっしり植わっていたらしいが、道路の拡張整備と周囲ビルの高層化、そして香港名物の道路に長く張り出した看板の見えを阻害するなどの理由から伐採され、この公園の前だけが何とか残された、という話を聞いたことがある。また別の人からは、九龍公園に1970年まであった当時のイギリス軍施設が、香港植民地政府の進めてきた1930年代からの九龍半島の都市計画をめぐって綱引きをし、軍がこの部分の木を死守していた、という話も聞いた。いずれも本当かどうか、キチンと調べたことはないが。しかしながら、現在ある23本は、現在の香港政府の環境局によって、重要保存樹木に指定されていることは事実である。
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ガジュマロは、自然の木としては、実に強かな生存方法を身につけている一方、人の手に掛かるとお行儀良くもなる(手なづけ易い)。しかし、最初の誘導を怠ると、都市のど真ん中にこのような姿で生き続けることになる。この強靭な木は、恐らく香港のコンクリートジャングルを幹肌、枝先や葉先で感じ取りながら、生存と繁殖の道を探り続けているはずである。
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by mindscape-ltd | 2010-09-28 00:22 | plants
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